後遺障害が残った後の生活について

交通事故で重い怪我を負われたり、医師に後遺障害が残ると言われた場合、不安や絶望を感じられることも無理はありません。私自身も事故直後にドクターから一生車イスの生活になると告げられて、先のことが全く見えずに苦しんだ経験があります。

「どうして俺一人がこんなひどい目にあわなければいけないんだろうか・・・」

しかし、その後、リハビリ専門の病院に入院し、そこに入院していた先輩たちのたくましさに触れて、「頑張って、自立した生活を送っている人がいる」「俺にだってできるはずだ」と大いに勇気づけられました。
その後、司法試験を目指して勉強し、弁護士になり、独立して弁護士事務所を経営するに至りました。

事故当初、「自分はこの先、やりたいことがまったくできなくなってしまった」と考えて落ち込んでいた時期が長くありました。しかし、すべてを失った訳ではない、車いすでもできることがあるはずだ、やりたいことができるはずだ、と徐々に考えを変えていくことができました。

もちろん、事故当初は治療やリハビリに専念していただきたいと思いますし、症状や後遺障害の程度によって、できることも異なるかと思います。無理をして、焦りを感じる必要はありません。

私自身は事故後、車椅子で自立した生活を送ることを目標に様々なことにチャレンジしてきました。
また、自分がせっかく車椅子になったので、障害者の方が様々な活動に取り組めるような活動にも参加しています。

以下には、私自身が取り組んできたことを参考までに記載させていただきました。

勉強について ~司法試験の受験~

前にも述べましたように、私は事故に逢うまで、弁護士になることなど考えてもいませんでした。それどころか、大学時代はバイトと遊びに明け暮れて、ろくに学校の勉強をしていませんでした。

むしろ、まさに、事故に遭ったことで、司法試験の勉強に取り組むようになり、弁護士になることができました。事故にあっていなければ、司法試験を受けることは無かったし、弁護士になっていなかったと思います。

お子様や学生さんで、事故で重度の障害が残ったり、車椅子になったりすると、学校にも行き辛くなったりします(私自身も、司法試験予備校時代、車椅子で校舎を移動するのが辛くて不登校になったことがあります。)が、是非、ゆっくり、じっくり、勉強に取り組んでもらいたいです。

今思えば、入院中に、「司法試験に挑戦しよう。弁護士になろう。」という指針が決まったことで、物事が前向きに進んでいったように思います。

車の運転・公共交通機関での移動について

事故で車椅子になった直後は、自分で車を運転できるとは考えてもいませんでした。
ところがリハビリ専門病院で、先輩が手動でアクセルとブレーキが操作できるように改造された車に乗っていることを知り、自分でも障害者用の手動装置付に改造された車を購入しました。

弁護士の仕事は、毎日、半分以上が裁判所に出かけたり、外出する仕事なのですが、私は毎日、車を運転して通勤し、裁判所などにも車で出かけています。

また、もちろん、障害によっては車が運転できない場合もあります。
しかし、最近では、私が事故にあった当初に比べると、公共交通機関も障害者が利用しやすくなり、支援も進んでおり、利用しやすくなっています。

一人暮らしについて

私はリハビリ病院から退院してすぐに、東京都新宿区のマンションで、風呂やトイレなどは車椅子でも使用できるように改修して一人暮らしを始めました。
私は熊本出身なので、家族は熊本に住んでいました。当然、事故直後、両親からは実家に戻ることを薦められました。
しかし、東京で一人暮らしをして司法試験の勉強をすることを決断しました。もちろん相当大変だと認識していましたし、覚悟して望んだつもりでしたが、やはりいろいろと一筋縄ではいかないことが沢山ありました。

食事をするにも、段差がある飲食店に一人では入ることができなかったり、買い物をするにも車椅子で通り抜けられない場所があったり、なにより司法試験予備校が段差があっていきにくかったりしたのです。
しかし、少しずつ日常の生活に慣れていって、ささやかながら将来への自信になっていきました。

就職活動について

その後ずいぶん苦労して司法試験に合格したのですが、弁護士として法律事務所に就職するときの就職活動でも、車椅子がネックになって、苦労しました。面接に行っても、あからさまではなくても敬遠する雰囲気があったり、物理的に階段のために、通勤が困難だったりと、就職先がなかなか決まらない時期がありました。

しかし、あきらめずに就職活動を続け、新宿にあった法律事務所に就職することができ、弁護士としての第一歩を踏み出すことができました。
弁護士でもそうなのですから、様々なハンディキャップを持つ方が就業することは今でも大変なことだと思います。
しかし、あきらめなければ、必ず、道は拓けると考えています。

スポーツについて

障害があってもスポーツを楽しみたい、という人も多いと思います。
私がリハビリの病院で知り合った千葉さんは、その後、パラリンピックの選手になり、今はNPO法人バラエティクラブジャパンの代表として、障害のある子供たちに陸上競技やテニス、バスケットボールなどの協議に参加してもらうイベントを開催しています。

私も、2001年の設立以来、法人の理事に就任して、活動に参加しています。
http://www.variety-club-japan.jp/ 是非、一緒にスポーツを楽しみましょう。

旅行について

また、障害があっても旅行に行きたい、という人も多いと思います。
私自身も、国内、国外を問わず、旅行が好きでよく出かけています。

私は、司法試験合格後にラスベガスで挙式をあげたのですが、その際、「もっと優しい旅の勉強会」という勉強会に相談に行って、的確なアドバイスをもらって、実現することができました。

また、その後、ニューオーリンズに旅した際も、この会に相談し、本当に思い出深い、楽しい旅にすることができました。その後、勉強会に参加を続けるうちに、いつのまにか代表を引き受けることになってしまいました。会の活動にご関心がある方はこちらを。
http://www.yasashiitabi.net/

音楽について

さらに、障害があっても、バーに行って音楽とお酒を楽しめる場を作りたい、という思いから、生演奏のライブなどを行うブルースバーを経営したこともあります。

また、障がいのあるミュージシャンによる音楽の祭典、ゴールドコンサートの運営にもかかわっています。ゴールドコンサートは障がいのあるミュージシャンのコンテストで、毎年秋口に東京フォーラムで大盛況のもと開催されています。
http://gc.npojba.org/

そんな私の体験を通じて、何らかの障害が残ったとしても、ご自身の人生を前向きに考えて、自分らしい生き方を選択することは可能だと思っています。

私自身の経験から、事故後の人生を充実したものとしてゆくためのアドバイス、サポート行うことができることを願っています。