セクハラ・パワハラ問題

セクハラ・パワハラ問題への対応

ケース

①新しくA店舗を出すにあたり、以前から能力を買っていた従業員に店長を任せた。A店舗の売り上げは予想以上に上がっているのだが、本店に「A店舗の店長が、頻繁に女性アルバイトの身体に触るなどのセクハラをしている」との匿名の電話が入った。

②自分は飲食店の店長なのだが、新しく入ってきたB店員は見所がありそうなので、今後自分の右腕になってもらうべく厳しく育てることにした。たまに指導に熱が入りすぎてキツイ言葉を使ってしまうこともあったが、自分では全てその店員を思ってのことだった。だが、最近別の店員達が、店長のA店員に対する態度はパワハラではないかと立ち話しているのを聞いた。

セクハラ・パワハラとは

セクシャルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)は、ともに現在では一般によく知られる言葉になっています。

一般にセクハラとは、「相手方の意に反する性的言動」とされています。そして、意に反するか否かは、労働者の主観を重視しつつ、平均的な女性又は男性労働者の感じ方が基準になると考えられています。また、平均的な労働者の感じからからはセクハラといえるか否か判然としない言動であっても、労働者が明確に意に反することを示しているにもかかわらず更に行われた性的言動は、セクハラにあたるものと考えられています。

パワハラについては明確な定義はありませんが、①暴行など身体的な攻撃、②侮辱暴言など精神的な攻撃、③仲間外れにしたり無視するなどの人間関係からの切り離し、④遂行不可能なことの強制など過大な要求、⑤程度の低い仕事しか与えないなどの過小な要求、⑥私的なことに過度に立ち入るなどの個の侵害、といった類型があるとされています。

セクハラ・パワハラについて使用者が負う責任

セクハラやパワハラが生じた場合、それを行った者が被害者に対して民法上の不法行為に基づく損害賠償責任を負うことは当然ですが、その者に対する監督等が不十分であった場合、使用者も被害者に対して責任を負います。

また、使用者は、労働契約上の義務として、職場における労働者の安全に配慮する義務がありますので、セクハラ・パワハラの防止や発生後の対応に不手際があった場合、被害者に対して賠償義務を負うことがあり得ます。 さらに、上記の損害賠償責任に直結するものではありませんが、法律上使用者には、セクハラがあってはならない旨の方針を明確化し労働者への周知・啓発すること、従業員の相談に応じて適切に対応する体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応といった措置を講じることが求められています。

セクハラ・パワハラ対応の難しさ

もっとも、セクハラ問題への対応には、様々な難しさがあります。

まず、実際にどういった事実があったのか確定しづらいという点があります。被害を訴えた人と加害者とされた人とで、言い分が食い違うことが多いうえ、それら当事者以外の人も職場内の人間関係等から必ずしも事実に即したことを言うとは限らないため、なにが起こったのかを特定するのが難しいのです。

また、仮に事実がある程度確定できたとしても、その事実がはたしてセクハラやパワハラといえるのかどうか、判断が難しいことが多いという点があります。セクハラやパワハラは曖昧さのある概念である上に時代によっても認識が変わってきますので、果たしてセクハラ・パワハラといえるのか、微妙な事案も多いのです。

さらに、仮にセクハラといえる事実があったとして、加害者側をどう処分すべきかの判断に困難が伴う点もあります。たとえセクハラやパワハラを行ったとしても、その従業員を処分できる程度は、その行ったセクハラやパワハラの強さによって異なってくるのです。したがって、もし客観的に軽いと判断されるようなセクハラやパワハラしかしていないような従業員を解雇したりした場合、逆のその従業員から使用者が訴えられることもあり得ます。

このように、セクハラやパワハラが起こった場合の対応には、様々な困難が伴います。しかも、問題が発覚した後にそれを放置してしまうと、後になって使用者に課される賠償義務が高額化することもあります。

したがって、事態が発覚した際には迅速かつ適切な対応が取れるよう、普段から準備をすることが必要ですし、早めに専門家に相談することもお勧めします。

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